飾らない情報発信が若手を呼び込んだ|若葉自動車様の採用事例

求人広告では伝わらない“会社の空気”を届ける。日常発信がつないだ新しい採用の形
若葉自動車は、長年地域に根ざしてきたタクシー会社でありながら、採用に課題を抱えていました。
求人広告だけでは届かない――そう気づいた同社が選んだのは、特別な演出ではなく、“いつもの日常”を見せる情報発信でした。
管理職や若手ドライバーが登場するYouTube動画は、「動画を見て応募しました」という声を生み、やがて異業種からの応募や若手層の採用につながっていきます。
本事例では、発信の継続を支えた工夫と、採用を超えて社内文化を変えていったプロセスを紹介します。
第1章 採用の壁と、「伝わっていない」という気づき
若葉自動車株式会社(以下、若葉自動車)は、名古屋を拠点に70年以上にわたり地域の交通を支えてきたタクシー会社です。
しかし数年前、同社は深刻な採用課題に直面していました。
社内のドライバーの多くが50代以上となり、若手の入社はほとんど見られない時期が続いていたのです。
求人広告を出しても応募はなく、説明会や紹介にも反応が乏しい。世代交代が進まず、このままでは事業の継続にも影響しかねない状況でした。
代表取締役・大山久美子様は、当時をこう振り返ります。
「応募が来ないこと以上に、“会社の姿が伝わっていない”ことが課題だと感じました。」
業務管理部 次長・種村晋平様も、採用の本質を見つめ始めていました。
「同業からの転職だけでは限界がありました。
未経験の方にも関心を持ってもらうには、まず“どんな会社か”を知ってもらう必要があると思いました。」
この気づきが、若葉自動車の採用戦略を大きく転換させるきっかけとなります。
“募集する”から、“伝える”へ──。同社は、自らの姿を発信し、理解してもらう取り組みをスタートさせました。
第2章 「飾らず伝える」発信の軸──大山社長の決断とエミューデザインとの連携
採用課題の本質を「知られていないこと」と捉えた若葉自動車は、エミューデザインに会社案内やホームページの相談を行いました。当初は採用目的での刷新でしたが、議論を重ねる中で浮かび上がってきたのは、“言葉だけでは伝わらない魅力” の存在でした。
たしかに、若葉自動車には明るく温かな社風がありました。しかし、求人票や文字情報ではその雰囲気を伝えきれず、誤解されている現実があったのです。
そのとき、大山代表が明確に口にした一言が、方向性を決定づけました。
「ホームページだけでなく、日常の雰囲気を“動く形”で伝えたい。
それなら、動画で私たちの日常を見せていこう。」
YouTube発信は、経営トップが“会社の本当の姿を見せる”ために選んだ手段 でした。
そこから、エミューデザインと共に発信方針が定められました。
● 発信方針として定めたポイント
- 特別に見せようとせず、日常をそのまま伝えること
- “社内の人”の言葉と表情を中心にすること
- 成果よりも、継続と信頼を大切にすること
大山代表は、この方針に強く共感します。
「私たちには飾る材料はありません。でも“仲間と働く良さ”はある。
ならば、それを正直に出していこう。」
こうして、ホームページの改善と並行して、YouTubeによる“動く広報”が本格的に動き出したのです。
第3章 YouTube発信と社内に根づいた“発信する習慣”
YouTubeチャンネルの開設は、すぐに成果が出た取り組みではありませんでした。
「何をテーマにすればいいのか」「どこまで映していいのか」──
当初は迷いもありましたが、それでも止まらず進めたことが大きな一歩となりました。
● 初期の試行錯誤と仕組みづくり
- 管理職による当番制 を導入し、発信の継続を仕組み化
- 企画シート を作成し、動画の目的やメッセージを明確に
- 編集担当者との連携も整え、現場の負担を抑制
こうした体制づくりにより、次第に社内の意識も変化します。
「これは動画になるかもしれない」
社員たちがそう感じるようになり、日常の中に“伝えるべき瞬間”を自ら見つけ出すようになりました。
車両の清掃・点検・出発前の声かけ、地域イベントへの参加など、特別ではない日常こそがコンテンツになると気づいた瞬間でした。
種村次長は、こう総括します。
「発信は業務外ではなく、自分たちの仕事を伝える一部になってきました。」
YouTubeは“採用ツール”ではなく、“社内文化を写す鏡” として根づいていったのです。
第4章 応募者の変化と採用成果──「動画を見て来ました」の声
動画発信を続ける中で、採用現場には明確な変化が表れました。
面接時、多くの応募者がこう口にするようになります。
「YouTubeの動画を見て応募しました。」
● 採用面で生まれた主な成果
- 異業種からの応募者が1割未満 → 5割以上に増加
- 20代〜40代が自然に集まり、最年少21歳の入社も実現
- 約2年間で20〜30名の新規ドライバーが加わる
未経験者にとっても、動画で社内の人間関係や雰囲気を事前に把握できたことで、「安心して応募できる会社」として選ばれるようになりました。
種村次長は、入社後の変化についてこう語ります。
「動画で見た人たちが迎えてくれる。その安心感が入社後の定着にもつながっていると感じます。」
● “数字ではなく、ご縁”を大切にする姿勢
大山代表は、再生回数や登録者数といった数値は重視していません。
「多く見られなくてもいい。必要としてくれる人に届けば、それで十分です。」
若葉自動車にとって発信とは、拡散ではなく “理解してくれる人との出会いの準備”なのです。
第5章 社外からの評価と広がり──新聞・協会・行政への波及
若葉自動車の発信は、採用だけに留まらず、社外からの注目にもつながりました。
2025年8月5日「タクシーの日」に、名古屋タクシー協会が実施した献血活動では、若葉自動車から若手ドライバーを中心に13名が参加。
その様子はYouTubeに公開され、地域内で話題となりました。
さらに、中日新聞の取材により、献血キャラクターと共に踊る姿が紙面に掲載。

● 業界団体による評価
名古屋タクシー協会主催・広報活動コンテストにて、
2024年:優勝(最優秀賞)
2025年:敢闘賞(大手事業者も含む中で受賞)
行政機関である中部運輸局からも「採用広報の先進事例」として取材依頼を受けました。
大山代表は、こう振り返ります。
「大げさに見せなかったからこそ、“等身大の会社”として評価していただけたのだと思います。」
第6章 未来への展望と、採用を超えた価値
YouTube発信がもたらしたのは、単なる採用改善ではありません。
社内では、動画が自然と“社員の声を拾う場”となり、コミュニケーションの活性化にもつながっています。
大山代表は、発信の本質をこう語ります。
「動画が人を集めたのではなく、
“どんな会社か”を理解してもらえたことが大きかったと思います。」
種村次長もまた、採用に対する考えの変化を感じています。
「求人を出すだけでは届かない時代です。
会社の方から、接点をつくりに行くことが大切だと分かりました。」
● 若葉自動車が示した、情報発信の価値
一般的な採用活動 | 若葉自動車の取り組み |
求人広告を出す | 会社の日常を伝える |
条件で選ばれる | 雰囲気で選ばれる |
数を集める | “合う人”と出会う |
結び──伝えなければ、出会えない
若葉自動車の事例は、採用に悩む企業に、次のメッセージを伝えています。
「伝えなければ、出会えない。続ければ、必ず届く。」
飾らない発信が、若手や新しい人材との出会いを生み、会社の未来を変えていく──その実践例が、ここにあります。